200307

外出を自粛しろと言われているが映画館に行かないと公開期間が終わってしまうのでこれは必要必至な外出です。
というわけで先週はようやくスケアリーストーリーズを見に行った。

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  • 「スケアリーストーリーズ 怖い本」監督:アンドレ・ウーヴレダル 2019・米/カナダ

 
ギレルモ・デル・トロ監督の映画だと思っていたが、制作がデル・トロなのね。
めちゃくちゃあらすじをざっくり説明すると、いじめられっ子たちがハロウィンの日におばけ屋敷にあったヤバい本を持ち出したらヤバい目に遭う話である。
 
2月に犬鳴村、ミッドサマーと連続してホラー映画を見ているのだが(ミッドサマーはホラー映画というかスリラーだよな。フェスティバルスリラーだな)、スケアリーストーリーズもジャンルとしてはホラー。人ならざるものに脅かされるという点では正統派な作品であろう。
 
私はJホラー大好き人間なので、でかい音でビビらせるホラー映画そんなに好きではないのだが、この映画はかなりでかい音でビビるホラーだったので「いや、でかい音が鳴りゃそれはビビるよな。」となった。
 
ジュブナイルものとしては悪くないと思うのだが、ホラー成分を求めるとそうでもない。
ワンカットの中で不気味な現象が起きる。とか、違和感がどんどん大きくなっていく。とかそういう方が生理的に怖い。
 
子供が容赦なくひどい目に遭うという点はかなり思い切っててよかったが、あれだけの目に遭ってクライマックスであぁなのはちょっと「なんでだよ!」ってなる。
 
あと、結構展開が早いので登場人物の個々のバックグラウンドや心情にもっと寄り添った描写があってもよかったのかなと思う。
特に主人公のステラの抱える孤独感をもう少し丁寧に描いていれば、クライマックスでの描写ももう少し感動的な感じになったのではないかと。
 
クリーチャーの造形はさすがだと思った。
かかし怖すぎだろ。田舎の畑にあるクオリティじゃねぇよ。
普通に立ってるだけで怖えぇよ。
 
かかしといえば昔、ほん怖で加藤清史郎くんがかかしに追いかけられる話があったのだが、あれは本当にへのへのもへじのかかしがわけもわからないままにひたすら追いかけてくるというものでめちゃくちゃこわかった。
 
怖さでいうとやっぱり、日常にありふれた何でもないものがありえないことになる方が怖いんですよ。無表情のかかしが平行移動で追いかけてくる方が恐怖。
 
怖い顔の武闘派のかかしが追いかけてくるっていうのはもうホラーというより別の恐怖なわけですよ。ヤベェ人が刃物もって追いかけてくる的な恐怖。
 
この映画の恐怖はどちらかといえばそっち。
 
ペールレディ(宣伝で頻繁に流れるふくよかな女性)は結構よかった。
どこからも迫って来る精神攻撃はなかなかいいぞ!
これだよ!こういうのだよ!!
 
クモのやつはもう生理的に「うわぁ、こんな目に絶っ対に遭いたくねぇ~~~~!!」ってなる。
 
この映画では「人が物語ること」というのが一つテーマとしてあると思うのだが、「繰り返し語られることが真実になる」というのは現代社会においてよくある事象なのでいい切り口だと思った。
 
怪異の元凶であるサラ・ベロウズは物語ることで真実を伝えようとしたわけだが、それを別の物語によって歪められてしまう。
人々の物語によって歪められた彼女が今度は「我々」を物語ることで恐ろしい目に遭わせる。
 
何もこれはフィクションの中でだけの出来事ではなく様々な情報の中で生きる我々にとって多面的なものの見方や大きな声に隠された声なき声の大切さを教えてくれるのではないか。
 
また、その外側では移民で家もなく車で寝泊まりしているレイモンへの謂われない差別なども描かれているという点もそのテーマに絡んでいるのではないか。
 
日々、誰が書いたかもわからないネットニュースやソースもよくわからない噂に踊らされた人々がそれを事実にしていく光景というのは珍しくもなく、この作品からはそうした寓意を読み取ることができる。
 
とはいえ、あまり難しく考えすぎずに1968年のアメリカの田舎町の空気みたいなものを楽しみながら見る少年少女たちの成長を描いた青春映画って感じで見たらいいと思う。
 
ドライブインシアターのシーンとかめちゃめちゃいい。憧れる。
昔は新さっぽろにもドライブインシアターあったらしいんだけど(一応その痕跡が見て取れる程度に残っている)、今は日本にはほぼ残ってないみたい。