191119

 

 

松澤くれは「りさ子のガチ恋♡俳優沼」という小説を読み終わった。

先日集英社文庫のアカウントがひでぇタイミングでオススメしていたので気になり読んでみた。
舞台作品のノベライズらしい。

 

26歳、彼氏なし。OLりさ子の趣味は舞台観劇。
大好きなイケメン若手俳優翔太君を追いかける日々。
彼が出演中の2.5次元舞台『政権☆伝説』に大ハマリ中で、最前席で全通。グッズもコンプ。お手紙をせっせと書いて、毎日出待ちし、そして高額プレゼントを贈る。
「がんばってる姿を観られるだけで幸せ」と思いつつも、彼からのちょっとした「特別扱い」に心ときめいていた。
だが、そんなある日。ネットで翔太君に彼女疑惑が持ち上がる。
SNSで彼との匂わせを繰り返す女の存在と、とあるアクシデントがきっかけで暴走するりさ子。
エスカレートする迷惑行為。その行きつく果ては……。

俳優とファン――
「この関係で、私の気持ちは届くのかな?」
演劇業界の闇に切り込む、
見て見ぬふりをしたかった愛憎劇。

引用元:web 集英社文庫 http://bunko.shueisha.co.jp/risako/

 

婚外恋愛に似たもの (光文社文庫)

婚外恋愛に似たもの (光文社文庫)

 

ヲタクを題材にした本といえば以前宮木あや子「婚外恋愛に似たもの」を読んだのだが、小説として読めても特に身につまされるということもなく、まぁ「こういうヲタクもいるかもしれない。」ぐらいの感想しか持てなかったのだが、今回もまぁ「こういうヲタクもいるかもしれない。」ぐらいの感想であり小説として読んだという感じだ。

今回はヲタクあるあるというよりも完全にサイコサスペンスだったが。

 

私はインターネットにおけるヲタクストレスをなるべく排除し愉快で楽しいヲタク生活を送りたいので愚痴アカや自担の名前を検索など絶対にせず解釈違いのヲタクや週刊誌のアカウントをブロックしたりヲタクのコミュニティに所属しないようにしている。自分のメンタルは自分で守っていこうな!!

 

何かに対する信仰というのは本来とてもクローズドなもので、それは共感や共有できるものではない。
自分の中で解釈し、反芻し、育てていくもの。
それによって自分の視点を、そして心を豊かにしてくれるもの。
好きなものに触れるということは自分の心と向き合うこと。

それはひけらかして誰かと比べるものでも誰かと馴れ合う道具でもない。

そのためには信仰対象との距離感を見誤ってはいけない。
余計なノイズに耳を傾けてはいけない。
自分の心にこそ耳をすますべきだ。

この本の主人公のりさ子は信仰対象を追うあまりに自分の心と向き合おうとしなかったのだと思う。だから自分が何を追い求めていたのかわからなくなった。
何がどういう風に自分の心をこれほどに動かし惹きつけたのか。
そんなことを考えないで自分の頭の中で勝手にふくらませた他人の心をわかった気になりただただ距離と本質を見誤り続けた。

 

好きな対象に見返りを求めるのか?

私はむしろ対象からの「応援してくれてありがとう」すらいらないと思う。
表現に触れて心が動かされたというそれこそが一番重要な対価だからだ。

 
いくら金を積もうが現場にいくら通おうが豪華なプレゼントを贈ろうがそれは本質とは全く関係ない。

信仰対象が表現を生業としている人間であれば、やはりその表現を評価するのが順当なわけで、それ以外の部分での評価というのはむしろ失礼にあたるとすら思う。

その人が人生を賭して表現したものを受け取って心が動かされる。
そんなシンプルなことに対するノイズが今の時代は多すぎる。

 

とはいえりさ子は舞台俳優のヲタクなので一概に比べることはできない。

私とは信仰対象との距離感が全く違うので。

舞台俳優ともなると現場に行かなければ会えない。

必然的に現場至上主義になるだろうし「直接会いにいく」ということを繰り返していれば認識してもらって当たり前と思っても不思議はない。

皮肉にも「会いに行く」ことの最もたる接触イベで彼女は地獄のどん底に突き落とされるわけだが。

 

"あなたに逢えた それだけでよかった

世界に光が満ちた

夢で逢えるだけでよかったのに

愛されたいと願ってしまった

世界が表情を変えた

夜の果てでは空と海が交じる"

 

というアゲハ蝶の歌詞さながらに接触イベでの「とある出来事」からの急転ぶりがすごい。

 

でもりさ子の気持ちもわからなくもない部分もある。
私の場合対象はステージに立つ人間ではなかったけれど。
優しくされたりすると勘違いするんですよ人間は。
「あれ、この人もしかして、私のことが好きなのかな、、、」って。
そんなことは全然なかった私の勘違いだったんだけども。
勝手に盛り上がって期待して勝手に傷ついたりさ子はきっとこういう気分だったのかもしれない。

私は自己嫌悪に陥りすぎてますます人間不信になったが。

 

 “愛は、いつも私を裏切る”

 

りさ子のガチ恋・俳優沼 (集英社文庫)

りさ子のガチ恋・俳優沼 (集英社文庫)