191101

先日購入した八束澄子「明日につづくリズム」を読み終わった。

レーベルはポプラ文庫ピュアフル、所謂ティーンズ向けの小説である。

 

先日ハルイチさんのラジオに湊かなえさんがゲストで来たとき、Twitterをぶらぶら徘徊して感想を漁っていたら因島出身の作家としてこの本について触れているpostを見つけた。
気になったので調べてみたところ、2006年に市町村合併因島市がなくなってしまう際、ポルノグラフィティが島の子供たちを全員招待して市民会館で行った凱旋ライブをテレビで見たことがきっかけで書かれた小説らしい。
当時、NHKでそのドキュメンタリー特集だったかを見た記憶がある。
なんで録画保存しておかなかったんだ自分。

主人公はポルノグラフィティの熱狂的なファンである因島在住の中学三年生女子だ。
物語はハルイチの実家にピンポンダッシュをするという描写で始まる。
実在の現役バンドマンの実家にピンポンダッシュする小説すごくないか、、、

そんな中学生女子が進路のこと(島に住んでいると当然行く高校によって島を出たりする)、友人や家族との関係などに悩みながら成長していくというような話である。

最近はめっきりホラーとかミステリーとかばかりで青春小説をあまり読んでいなかったので読んでてあまりに爽やかでキュンキュンしてしまった。あとありがちな恋愛描写などがなかったのがよかった。主人公はひたすらポルノグラフィティに心ときめかせている。わかる、、、わかるよ、、、

物語の終盤、凱旋ライブの描写は読んでいてちょっとグッときてしまった。
自分の憧れてるバンドがこんなシチュエーションでライブやってくれたら号泣してしまう。
でもこれはフィクションではなくライブは実際行われたわけで、きっとライブに招かれた小中学生のなかには主人公のような気持ちになった子もいるはずだ。
おそらく、この島で育った2人も自分たちがそうであったように島に住む子供たちに誇りと希望を持ってほしいという気持ちがあったんだと思う。

それはこの物語の中にも確かに流れているものだし、巻末に収められた作者のあとがき、湊かなえさんが寄せた文章にも続いている。

私も地方在住とはいえ、札幌と因島では全く状況も違うので比べられるわけもないのだが、地方に住んでいる人間であればどこか共感できる部分がある話だと思った。

昔は東京に住みたいと思っていた。
好きなバンドはこの街に来ないままに解散していき、本の発売は3日遅れ。見たい展覧会もみんな東京。終電もお店の閉まる時間も早い。

それに比べてなんでも手に入るキラキラ輝いてるロシアより遠いテレビの中の街。

けど、地元からカッコいいバンドがいっぱい出てきたり、独自の文化があったり、素敵なお店があったり、移り変わる季節の美しさに気付いたりして地元を愛せるようになってきた。誇るべきものはここにも充分にあった。

私は地元を出ていくことよりもこの土地で暮らしていくことを選んだ人間なので、おそらくこの先もこの土地で暮らしていくと思うが、音楽というのはたとえどういう場所で何を選んだ人間に対しても寄り添ってくれるものだ。
過酷な日々を生き抜いていくためものであったり、或いは何かを決断しなければならない人間の背中を押してくれるものだったり。

どんな場所にも鳴り響く音楽がある。
人生をほんの少しだけ良い方へ導いてくれるような。
つまらない日々を愛せるような。
音楽に宿るそういう魔法を私は信じ続けている。