最近読んだ本について

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はてなを全然更新していない。

家にいて時間はあるはずなのにPCに向かう以外にやることがいろいろあって文章を全然書いていない。

まぁ、Twitterばっか見てるけども。精神衛生に悪い!!

 

そんなわけで本もあまり読めてないけどゴールデンウィークにエッセイ2冊を交互に読んだ。

 

  

自由思考

去年旅行に行ったときに丸善丸の内本店で買った。

旅行中は金銭感覚がバカなので本をたくさん買ってしまった。重いのに。

 

中村文則の初めてのエッセイ集。

中村文則の作品は暗くて重くてシリアスな内容のものが多いが、公式ホームページのお知らせ(日記みたいな感じだが)や、寄稿や単発のエッセイなどを読んだり、タイプライターズに出てるのを見たりすると結構ユーモアのある人なのだと思う。

 

中身は3章に分かれていて、Ⅰがライトなエッセイ、Ⅱが政治的なもの、Ⅲがまたライトなエッセイ、受賞関連文となっている。

 

Ⅰに関してはAVの話とか爆笑してしまうので外で読むのは危険だと思ったが、どうせ家から出れない今のような状況にぴったりだと思うので家で読んで思う存分爆笑すればいいと思う。この章読むと中村文則が大好きになってしまう。

 

Ⅱは現在の状況も相俟って読んでいてかなり絶望的で憂鬱な気持ちになったが(この国に住んでいるということが大変につらい)、作家が自分の考えを明確にし、発信していくということは当たり前のことだろうなと思う。彼の作品に込められたメッセージとも地続きなので読んでて特に違和感はない。

震災の頃のものが多いが、10年経ってもこの国の状況は全然変わっていないという事実が重く横たわる。

その中で本書のための書きおろしである「様々な国のブックフェスティバル」から以下一部抜粋する。

 

“小説を読む、つまり個人の内面を見、それに寄り添う習慣を持っている人は、排他主義者や、差別主義者などにはなり得ない。人を外側から一方的に見るのではなく、個人の内面に寄り添う想像力が、小説を読む人には養われていることが多いからだ。”

 

私は本を読む人に比べると全然本を読めていないけれど、本を読むことで様々な視点を獲得してきたと思う。国や性別や年齢など関係なく、様々な状況にある人の視点を通じて物語に触れることで自分の知ることができない世界を見ることができる。

 

そうして得た視点や想像力は、性別、世代、国、立場などの対立を煽るラベリングに対して屈しない武器になると思う。

 

Ⅲは著者近影を撮るときにほっぺがぷっくりしていてお饅頭が写っているって言ってるやつが面白かった。今回の近影はかっこよく撮れてるよ、、、

 

 

できることならスティードで

小説Tripper連載のエッセイに3編の短編小説を加えたエッセイ集。

本当は各所に寄稿した本のレビューなども掲載してほしかったが、掲載媒体が異なるので難しかったのかもしれない。それに統一した「旅」というテーマがあるのでそこに本のレビューが挟まるとちょっと色が変わってしまうのでいずれまたエッセイ集的なものを出してほしい。

 

「旅」というテーマがあるとはいえ、ただの旅行記ではない。『場』によって引き出された思考があらゆる方向に展開していくというかなり独特なものになっている。

確かに普段行かない場所に行くことで普段考えもしないようなことを考えたりもするけれど、そういうレベルではない。広がり方が尋常ではない。

なんというか、「思考の旅」といった方がしっくりくるような。

 

個人的にはグラミーの授賞式を見て差別問題について言及した「Trip 6 ニューヨーク」と、仏教の思想と愛について書かれた「Trip 9 スリランカ」が好きだった。特にスリランカの“自分に刃を向ける人を抱きしめられる大人であれ”という言葉は本誌で読んだときからずっと私の心に残っている。

この思想は著者のソロ曲である「世界」にも共通しているテーマだ。

 

“刃を抱く覚悟はあるのかと

問いながら歌う”

 

また、同じくスリランカの仏教の教え『好きになりすぎないこと』というのもなるほどな。と思った。

確かに、好きなものがたくさんあるけれど、好きになりすぎるとつらくなるんだよな。

最近、愛についてよく考えるんだけど、誰かや何かを好きな気持ちをどう扱っていくかって結構慎重にならないといけないし、自分がどうしてそれを好きなのか。イメージを押し付けていないか。本質を見誤っていやしないかというのは常に自分自身に問うようにしている。

 

小説ももちろん面白いんだけど、こういう思慮深く想像力に長けた人の活動を様々な角度から見ていられるというのはとても贅沢なことだなぁと思う。

 

 

どちらの本にも言えることだけど、エッセイというのはその人がどのように形作られているのかがよくわかるし、メインの執筆物が小説の2人だからこそ、その作品がどのような思想や思考や経験で形作られているか読み解くヒントになる。

 

最近ネットの流れていく文字ばかり追っていたのでこういう風に人の考えていることにしっかりじっくり触れられる本という媒体はいいものだなと思った。

 

部屋に小説もかなり積んじゃってるから読んでいかないと、、、